田上菊舎 俳句集

1月の俳句:菊舎とあるく新年の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
摘ぬ身も野辺へ出初の若菜かな 江戸 32
すみやかな年のまはしやむめの花 福岡 34
月花に恥ぬ袖なり着衣はじめ 長崎 45
松竹に恵みかさねよ千世の春 50
大ぶくや中にみどりの色静か 博多 52
輪飾のしまりごゝろや親子草 長府 53
しらべ初や唐人山の松風も 59
包み余る玉ふところや着衣初 京都 61
恩の日や明て三日の筆はじめ 長府 68
灑ぐ筆や産湯ごころの若水 長府 74

2月の俳句:菊舎とあるく初春の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
どの道へけふは行ふぞ日永 美濃 30
つぼみから人の目につく野梅 美濃岩手 36
あの声は網の誘ひか朝霞 美濃大垣 36
暁の星もはらりと野梅かな 41
下戸ならで焼もち坂の桃柳 保土ケ谷 42
跡さきはに橋のまだ長し 岡崎 42
種は何かしらず摘けり磯若菜 長崎 45
煙り行山裏いかに雉子の声 神田 56
おもほえず春の夜の夢うつゝとも 長府 68
むつの花の解ていやます匂ひかな 長府 74

3月の俳句:菊舎とあるく春の旅 
俳 句 (青字:季語) 場所
の夜にもかざらぬ同士や相舎り 備前 35
三千歳にみちあまる日や桃の酒 長崎 45
たまたまに留守すれば猶日永哉 48
いとゆふに眠るは誰ぞ釣りの舟 長門彦島 51
大空に含む薫りや朧月 59
帰るみちもさらに忘れて桃のけふ 大坂 61
染過ぬ教へをあさぎざくら 京都 63
東風ふくや包む物なくみな薫り 長府 72
菜の花や金銀の色桜色 長府 72
下枝下枝のこらず散て空し 長府 73

4月の俳句:菊舎とあるく晩春の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
乗て出て戻りは歩行の汐干 江戸 32
へだてじな遊ぶ心はみても 江戸 41
雲に乗る芳野のの晨かな 吉野 42
堅い文字の札は立ても草若し 佐賀 46
けつく空の曠ふ見えたり朧月 京都 54
進むこゝろわざと延ばしてに今 58
野遊や名もしれぬ連と又遊び 長府 70
若鮎や嵯峨迄はまだ五六丁 長府 72
折かけて置くも無念のあざみかな
もとの通り裏門しめる暮の春

5月の俳句:菊舎とあるく初夏の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
まづ名乗れ越の関山時鳥 信濃 30
苗代やまだ中のよい貰ひ水 江戸 32
結ぶ縁や茂る柳の蔭に又 長崎 35
苔の花やちょつとやすらふ気も静 佐賀 35
茂る葉の蔭にも歌よむか 大和 38
紛なき軒端やそれと薫る風 京都 38
馴染よし花たちばなのかほる宵 宇治 38
影ゆかし竹にほたるの細みさへ 美濃 42
其琴に言伝せうか薫る風 熊本 52
しら藤やそっと吹ては波立せ 長府 57


6月の俳句:菊舎とあるく仲夏の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
藻の花や夕べの舟は出した跡 美濃 32
藻の花や炊水すてるかゝり舟 美濃真桑 32
風のちからからふでもなし競ひ船 長崎 35
とくと誠見て別るゝや昼顔 佐賀 35
埋火やに更た窓に又 佐賀 35
蛍火の影もさやけし明星水 美濃 36
わたる跡はもとの海なり競ひ舟 長崎 45
照らす道はの窓の余りかも 下関長府 56
藻の花やみもすそ川の雨なみだ 下関長府 56
下駄はきて見るは慮外の田植 京都 63

7月の俳句:菊舎とあるく晩夏の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
衝立に日のさす如しつじが花 信濃 30
道のためにいよいよ汲まん庭清水 美濃岩手 32
何もいはで涼しいふりに別れふか 長崎 35
またも世にうき草の身の手向事 美濃柏原 36
たち添ふや足立のみねに雲の峰 足立 51
いとゞ涼し先づ試の響にも 熊本 52
白雨や人のこゝろも洗ひあげ 熊本 52
柳桜も葉にそよぐすゞみかな 京都 54
葉柳や纜つなぐこゝろよさ 長府 61
あるじぶって瀧指させば天の河 長門 72

8月の俳句:菊舎とあるく初秋の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
に遊び花に事足る庵かな 長良 30
姨石をちからに更てすゞし 姨捨山 30
秋たつや何所へかちって宵の雲 美濃 32
釜釣れば烹音すゞし松の涛 大坂 38
老に恥ずわたる小河の波すゞし 京都 54
月もひとつ我もひとりの宿すゞし 長府 56
すゞしいざよふ月の生こま山 大坂 61
秋たつやきのふ洗た耳の穴 長府 62
先たのし大慈大悲のの舟 - -
よしあしに渡り行世や無一物 長府 74

9月の俳句:菊舎とあるく仲秋の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
長き旅も爰にこふした力草 江戸 31
夕霧や山ひとつかくしふたつ隠し 美濃 32
砂に置く箒目も先づ清し 福岡 34
寝覚寝覚念仏うれしき夜長かな 美濃 36
いざよひや満たがる世をたしなませ 長崎 44
に悲し只一片の峰の雲 58
伊勢の海の光も添はん草の月 大坂 59
猶末をたのみて風炉の名残 下関 73
咲くからは薫り合点か秋の花 長府 74
無量寿の宝の山や錦時 長府 74

10月の俳句:菊舎とあるく晩秋の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
初雁や越す遠ふ山の雲も澄み 美濃岩手 32
身にしむや大悲の庭に吹く風も 谷汲山 32
ばせを葉や広ひ遊びはこちらにも 福岡 34
もみぢまじりの柴焚て袖干ぬ 上野 41
たのもしき道のしるべや 信濃 41
山姫のをさらす夕日かな 下関 56
白雲に香を吐くの山路かな 京都 59
廬の窓によむやつくしののふみ 長府 61
一ト卸し羽風の音や渡り鳥 長府 71
山々も舟から奪ふかな 下関 73


11月の俳句:菊舎とあるく初冬の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
手入れした菊恥かしき野菊 江戸 31
己が葉に結ひ寄られてかな 美濃 32
旅好のにたのもし生の松 福岡 34
焚柴にそふであったか初時雨 長崎 44
旅出せずに結句遊んで小春 佐賀 45
露涙ひとえにそゝぐ藤ばかま 長府 55
照しわたす天のかけ橋もみぢかな 京都通天橋 60
八重垣に寄るや出雲の神遊び 長府 65
薫る道や千種百くさ花野 長府 71
朝露や霜より白き軒瓦 田耕 72


12月の俳句:菊舎とあるく仲冬の旅
俳 句   (青字:季語) 場所
戻りには傘おもき雪見 長門生雲 33
さゝ啼て飛ぶや御庭の朝日影 大宰府 34
迷はじなならひしまゝの雪の道 美濃岩手 35
これもわが手柄にはあらず室の梅 京都 42
つみそへて行柴舟やゆきの朝 長崎 44
名にめでゝこの産衣せいぼかな 長府 58
こゝろ冴るまでは叩きぬの門 博多 53
あすしらぬ世を教えての早咲 京都 66
むかしむかし其昔聞け冬籠 長府 64
天が瀬の春を歳暮の若布哉 長府 72

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